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PEN 2025/07/23(Wed)

完調品の活用は管理栄養士に必須のスキル

こんにちは。月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長でフリーの栄養編集者の佐々木修です。

 2025年7月17日(木)、私が司会を務めるオンラインのトークイベント、「クックパック®︎トークライブ」第2弾が開催されました。今回、講師にお招きしたのは工藤雄洋先生(済生会横浜市東部病院栄養部 部長)です。

 同院は今年4月、それまで全面委託していた給食業務を見直し、献立管理と調理までを病院側が担当し、盛り付けと配膳、洗浄を委託給食会社が担当するという部分委託へ切り替えることを決定しました。
 この見直しの理由は、給食委託会社からの申し入れだったそうです。慢性的な人手不足の中、調理スタッフの確保が困難となったことに加えて、第三次救急病院である同院には病態の複雑な患者が数多く入院しており、個別対応が膨大になって食種も増加。対応しきれなくなっていたのです。
 この状況を受けて工藤先生は、「もはや全面委託は不可能」と判断。同院経営者へスタッフ増員と完全調理済み食品の導入を訴えました。

「結果として、調理スタッフを約10人増やし、今年の8月から朝・昼の2回を完全調理済み食品に切り替えることになりました。これによって、調理スタッフの勤務時間低減をめざすことが可能となります。食事自体のコストは多少増加するものの、人件費の抑制により、給食のトータルコストにつながればいいと考えています」
 夕食のみ従来のクックサーブでの提供を継続する目的は、調理スタッフのモチベーションを維持するため。3食すべてを完全調理済み食品に切り替えてしまうと、調理スタッフのスキルを発揮する機会を奪うことになるからと工藤先生は説明します。

「調理スタッフのモチベーションの維持や向上は非常に重要です。我々病院側の管理栄養士は、委託給食会社のスタッフにも、もっと臨床に目を向けてほしいと思っていますし、逆に委託給食会社のスタッフは我々病院側の管理栄養士に対して、臨床だけを見るのではなく、厨房内の状況も把握してほしいと思っているのではないかと思います」
 委託給食会社も病棟業務を担当する病院の管理栄養士も忙し過ぎるあまり、なかなか話し合いの時間が取れない状況にあるのではないでしょうか。給食業務の効率化は、両者の話し合いの時間捻出にも貢献するのではないかと工藤先生は考えています。

「これからの時代、病院の管理栄養士は、臨床業務で入手した情報をいかに的確に厨房業務に落とし込み、質の高い食事に反映できるかというマネジメントスキルが問われます。完全調理済み食品をいかに有効活用するかというスキルも私たちにとって必須となるかもしれません」

済生会横浜市東部病院栄養部部長の工藤雄洋先生

済生会横浜市東部病院NSTの活動風景

クックサーブから完全調理済み食品の一部導入へ。今、病院給食のあり方が大きく変わりつつある


佐々木修氏

佐々木修/プロフィール

月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長であり、現在はフリーの栄養編集者として活動しています。
栄養管理に関する情報を発信するトークライブなども行っており、専門的な知識を活かして多方面で活躍中です。