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佐々木修コラム
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NEW PEN 2025/06/23(Mon)

完調品の導入はもはや時代の潮流

こんにちは。月刊『ヘルスケア・レストラン』元編集長でフリーの栄養編集者の佐々木です。

 政府による備蓄米の放出により、米価こそやや落ち着いてきた感がありますが、まだまだ食材費は高く、調理スタッフの高齢化に伴う人材不足にも解決の光は見えません。給食業務依頼先の委託会社さんとの委託費に頭を悩ます日々が続く方も多いことでしょう。

 今回は、調理スタッフの人材不足に悩みながら、抜本的な給食改革を決意している病院事務長のお話を紹介します。
 熊本県上益郡甲佐町にある谷田病院。85床+介護医療院14床の療養型の同病院に事務長として、藤井将志さんが着任したのは、今から約10年前。当時、同院はマネジメントの基本であるヒト・モノ・カネのすべてがない状態だったそうです。
「それまで長年、病院のコンサルタントとしてさまざまな施設の病院経営を外部からサポートしてきた私ですが、当院に事務員として着任した時は、どこから手を付けていいのかまったくわかりませんでした」(藤井さん)

 なかでも藤井さんが最も苦慮したことが給食経営管理だったそうです。
「その頃、当院の栄養科は直営だったのですが、スタッフは高齢者が多く、退職者が後を絶たず壊滅的な状態にありました。そこで私たち経営陣は、近隣の管理栄養士の養成校や調理師学校の学生たちにアルバイトを呼びかけて回り、若い働き手を必死に集めました」(藤井さん)
 その甲斐あって、栄養科のスタッフは一気に若返り、職場が活気づくようになったと、藤井さん。しかし、若いスタッフばかりで栄養管理はもちろん、調理業務についても実践経験を積んでいるスタッフはほとんどいませんでした。そこで、藤井さんらは栄養科のアドバイザーとして外部から栄養部門のコンサルタントを招聘。そのコンサルタントに栄養科のマネジメントを委託したのですが……。
「厨房現場で給食業務に従事するスタッフとコンサルタントが描く栄養科のあり方という理想がどうもうまく噛み合わず、両者が対立するようになってしまったのです」(藤井さん)
 その後、何度もスタッフの入れ替わりが繰り返され、リーダーも何回か交代したのですが、やはり、現場スタッフとリーダーとの間の溝、つまり現場の現実とリーダーの思い描く理想のギャップが埋まらず、スタッフが次々と辞めて、もう給食を提供することが困難な状況にまで陥ってしまったのです。
「そこで2年前、急遽ある給食会社に業務委託することになりました。しかし、昨今の物価高や人手不足による人件費の上昇を受けて、委託費がかなり高くなり、病院経営の観点からこのような全面委託ではなく、給食業務の内製化を含めた抜本的な給食改革しなければならないと考えています」(藤井さん)
 そのビジョンの柱として藤井さんが考えているのが完全調理済み食材の導入による厨房スタッフの負担軽減です。

 例えば、株式会社フーヅリンクの完全調理済み食材「クックパック®︎」であれば、導入先の病院・施設に合わせた内容の食事を人数分真空パックされた状態で納品。病院や施設ではこれを提供時に再加熱してトレイに盛り付けるだけとなります。下処理や仕込みの手間が不要となり、調理スタッフの負担を大幅に軽減できます。さらに、人件費や調理に伴う光熱費のコストカットにつながります。

「見渡せば、私たちの多くは、コンビニのサンドイッチやお弁当、宅配弁当などで日々の食事を済ませています。毎食手作りしている人は、少数派でしょう。病院や施設の食事も同じこと。ほぼ全食個人対応という時代に一つひとつ手作りしている余裕はありません。今後はいずれの病院・施設においても、完全調理済み食材を利用して給食業務を効率化し、管理栄養士が病棟へ出る時間を増やして入院栄養食事指導や早期栄養介入管理加算、周術期栄養管理実施加算の算定につなげてく流れになっていくと思います」(藤井さん)

谷田病院事務長の藤井将志さん

谷田病院栄養科による糖尿病教育入院患者に向けた調理実習の準備風景


佐々木修氏

佐々木修/プロフィール

月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長であり、現在はフリーの栄養編集者として活動しています。
栄養管理に関する情報を発信するトークライブなども行っており、専門的な知識を活かして多方面で活躍中です。