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PEN 2026/10/09(Fri)

完調品を含めた提供方法の多層化が今後の栄養戦略を支える

こんにちは。月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長でフリーの栄養編集者の佐々木修です。

 2026年9月28日(月)、私が司会を務めるオンラインのトークイベント、「クックパック®︎トークライブ」第9弾が開催されました。今回は、大阪労災病院栄養管理部の西條豪先生を講師にお招きし、GLIM基準のテーマを中心にお話をいただきました。

 GLIM基準とは2018年に世界の栄養学会が低栄養の診断基準として策定したものであり、本邦においても令和6年度診療報酬改定において、回復期リハビリテーション病棟入院料1の「栄養状態の評価」の算定要件になりました(入院料2〜5は努力義務)。また、一般病棟の入院料の算定要件においても「標準的な栄養スクリーニングを含む栄養状態の評価」を行うこととされ、その評価法の参考としてGLIM基準が挙げられています。

 GLIM基準による低栄養診断のプロセスを図に示しました。まず、全ての対象者に対してMUSTなどを用いた栄養スクリーニングを行い、低栄養の有リスク者を抽出。抽出した患者に対して、表現型基準と病因基準による低栄養診断を行い、両者から1項目以上該当した場合、低栄養と診断。さらに低栄養の重症度判定を行う流れとなります。

 西條先生ら栄養管理部は、今回の改定に先立つこと3年前よりGLIM基準を導入。看護師がMUSTを用いた栄養スクリーニングを行い、低栄養の有リスク者の抽出し、その後、病棟に配置されている10人の管理栄養士が低栄養診断と重症度判定を行っています。
「MUSTだけでは有リスク者を取りこぼす可能性があります。そのため、特定の基準として、脳卒中患者や心臓血管術の患者、術後に何らかの栄養障害が想定される患者などを設定し、患者の栄養状態を精査するようにしています」

 GLIM基準導入の動機は、医療者として客観的に患者の栄養診断を標準化するためと西條先生。管理栄養士は養成課程において、他の医療職と異なり、臨床領域だけでなく、公衆栄養や食品学、衛生管理など、幅広い分野を学ぶ必要があります。そのため往々にして、循環器疾患=減塩食、糖尿病=エネルギー制限食など、病名と病院食をイコールで繋いだ公式を栄養学と認識し、この公式を持って栄養食事指導することが管理栄養士の業務であると捉えがちになっていると、西條先生は言います。
「客観性に乏しいこの公式では、栄養障害を有する患者を救うことができませんし、他の医療職と話をすることすら困難です。そして、大昔に作られた診療報酬の特別食加算がこの状況を支え続けているのです」

 さらに西條先生は「加算算定のためのGLIM基準の導入であってはならない。それではこの状況は何も変わらない。患者の病態から低栄養診断と重症化判定を行い、その診断と判定に基づいた栄養戦略を立てて、重症化予防に繋ぐというプロセス、そして良好なアウトカムに繋げることこそ管理栄養士の使命」と強調します。

「給食経営管理もこの使命に基づいたものであるべきと考えます。現在、食材費や光熱費の高騰、慢性的な調理スタッフの不足など、給食の提供に頭を悩ます病院は多いと思います。そのため、院外ニュークックチルや完全調理済み食品の導入など、様々な手段を講じていることと思います。しかし、それらが目先のコスト削減のためだけであってはなりません。自院の患者特性はどうなのか、それに伴う栄養障害の状況はどうか、どんな栄養戦略を講じればその解決につながるのか、これをしっかりと見据えた上であるべき給食改革を断行すべきでしょう」

西條先生ら栄養管理部は現在、この栄養戦略を推進するためのツールの1つとして、コンパクト食を開発しています。これは通常の食事の栄養量をギュッと圧縮し、密度当たりの栄養量を高めた献立のこと。摂取量の少ない患者に対し、栄養補助食品を付加しても同じような味ばかりで患者が飽きてしまう現状を鑑み、普通通常の献立のボリュームを抑えてエネルギーとたんぱく質量を高めれば食べてくれるのではないかと考えたものだそうです。
「コンパクト食は、1品約100gで200kcal、たんぱく質10gに設定しています」
メニューは、ハンバーグやオムライス、さばの味噌煮や出汁巻き、エビチリや豚キムチ、そば、うどん、ラーメンなどの麺類、シュークリームやパフェなど朝昼晩の2週間サイクルで提供しているそうです。

「当院は現在、コンパクト食の他、提供食数の約1割以下をクックサーブで賄っていますが、そのほかは院外ニュークックチルで納入されています。さらに完全調理済み食品の導入も検討中です。病態の複雑な高齢患者が急増する中、重症化予防の栄養戦略を完遂するためには、こうした様々な方法を組み合わせながら、対応していくことが望まれるでしょう」

図 GLIM基準による低栄養診断のプロセス
https://www.jspen.or.jp/glim/glim_overviewより


佐々木修氏

佐々木修/プロフィール

月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長であり、現在はフリーの栄養編集者として活動しています。
栄養管理に関する情報を発信するトークライブなども行っており、専門的な知識を活かして多方面で活躍中です。