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周術期栄養管理周術期の早期経口摂取は必須 「完調品」で術後早期の食事提供へつなごう
こんにちは。月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長でフリーの栄養編集者の佐々木修です。
2026年5月13日(水)、私が司会を務めるオンラインのトークイベント、「クックパック®︎トークライブ」第7弾が開催されました。今回は、済生会横浜市東部病院の医師、谷口英喜先生を講師にお招きしました。
横浜市鶴見区に位置する済生会横浜市東部病院は、562床の地域がん診療連携拠点病院。日々、多くのがん患者さんの手術を行っています。谷口先生はその中で患者支援センター長を務めています。
「当センターは予定手術患者さんに対し、術前から手術に備えるため介入することを目的としており、当センターに常駐する管理栄養士が術前から患者さんの栄養アセスメントを行い、手術に備えるための栄養管理を担っています」と谷口先生。具体的には、低栄養患者さんの場合、術後の早期回復を図るための栄養状態の改善、過栄養の患者さんについては手術を安全に行うための減量指導などを行っていくそうです。
「こうした当センターの取り組みは、主としてERASのガイドラインに則って行っていきます」
ERASとは、Enhanced Recovery After Surgeryの略であり、術後の早期回復を目的とした集学的な全身管理プログラムです(図1)。早期離床や早期リハなど、様々な項目がありますが、管理栄養士はこの中で、術前飲食期間の短縮、術前経口補水や術後早期経口摂取、術後早期経腸栄養などを担っていきます。
「当院はERASに則り、大腸がん術後であれば翌日の朝食からクリア流動食を提供。経腸栄養であれば術当日から投与開始しています」
術後食の内容は術式や病態などによって異なりますが、いつ何をどのくらい提供するかの判断は概ね管理栄養士が医師に助言またはカルテの代行オーダーをしているそうです。
「注意しなければならないのは、内因性のエネルギー産生です。人体には、強い侵襲を受けると骨格筋などを分解してエネルギー産生する仕組みがあります。これを考慮せず、エネルギー必要量を投与するとオーバーフィーディングとなり、予後の悪化につながる可能性があります。管理栄養士はこの点を考慮しながら、フィジカルアセスメントや様々な指標を検討しつつ、早期回復に向けた栄養管理計画を立案しなければなりません」
ところで、なぜ早期経口摂取や早期経腸栄養が必要なのでしょうか? それはできるだけ早期に消化管を動かすことで免疫低下を防ぎ、縫合不全などのリスク低下にもつながるからだそうです。決して、エネルギーを急いで補充することが目的ではありません。
「可能な限り早期に適切な術後食を提供することが早期回復の大きな鍵となります。しかし、術後食といっても多様であり、術後に一つひとつ手作りをしていては、早期回復につながりにくいこともあります。私は多様な術後食の完全調理済み食品をストックしておき、必要な時にすぐに提供可能な体制を構築することが早期回復へつなぐ大きな要因になると考えています」
今、谷口先生は日本栄養治療学会(JSPEN)内に日本版ERASプロジェクトを立ち上げ、日本の医療に適した実践的なERASの開発・普及に努めています。でもなぜ、日本版ERASが必要なのでしょうか?
「例えば、日本の手術は非常に丁寧で質が高く、術後5年生存率が海外に比べて格段に高いという成績を誇っています。反面、手術の時間が長いため、術後食の準備が間に合わず、術後4時間の早期経口摂取が困難という点があります。また、本来ERASには含まれない口腔管理もERASを実践する多くの施設では取り入れています。こうした状況を踏まえ、日本の医療の状況に合ったERASの実践ガイドを策定しているのです」
日本版ERASプロジェクトは現在、最終的な取りまとめの段階になっており、パブリックコメントを募っています。谷口先生は1人でも多くの管理栄養士に日本版ERASを実践してもらいたいので、各施設に応じたパブリックコメントを上げて欲しいといいます(2026年5月31日まで)。
「例えば、糖尿病であれば経過に数年かかりますが、周術期では糖尿病の患者でなくても耐糖能異常が起きるので、全ての患者において短期間で血糖管理、高血糖に伴う合併症、治療、食事提供などを経験することができます。この領域の栄養管理に携わることは、あらゆる病態の数年に匹敵する経過を圧倒的短時間で経験することになるのです。ぜひ、多くの管理栄養士にこの領域の栄養管理を体験して欲しいと思います」

図1 ERASプロトコールの項目
赤字は栄養に関連する項目
https://www.nutri.co.jp/nutrition/keywords/ch10-1/keyword4/より


佐々木修/プロフィール
月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長であり、現在はフリーの栄養編集者として活動しています。
栄養管理に関する情報を発信するトークライブなども行っており、専門的な知識を活かして多方面で活躍中です。


