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学校・家族生活令和8年度診療報酬改定を乗り切る 完全調理済み食品の導入
こんにちは。月刊『ヘルスケア・レストラン』元編集長でフリーの栄養編集者の佐々木です。
令和7年11月7日、中央社会保険医療協議会(以下、中医協)から「入院時の食費・光熱水費」(その1)が発表されました。
これによると、令和6年6月から1食あたり30円、令和7年4月から1食あたり20円と入院時食事療養費の引き上げが実施されましたが、それ以降も病院給食をめぐる状況に大きな変化はなく、物価の上昇にこれらの値上げが追いついていない状況が報告されています。
結果、「病院給食が赤字で提供されていることを患者や国民はほとんど知らないと思うので、理解いただいた上で、一部自己負担で引き上げを検討することも選択肢の一つではないかとの意見があった」としています。
また、嚥下調整食の必要性のある患者は一定数おり、個々人の嚥下機能に適した物性に調整された嚥下調整食の提供が摂食嚥下障害の患者におけるエネルギー摂取の増加やADLの改善に寄与するものの、嚥下調整食は普通食よりもコストが高く、加えて特別食加算の対象外であるため、その評価のあり方が論点の1つとして挙げられています。
つまり、令和8年度診療報酬改定では、病院給食の提供において何らかの形で患者の自己負担の引き上げが行われる可能性があると言えるでしょう。
しかし、患者にしてみれば「今まで通りの給食なのになぜ負担額が上がるのか?」と疑問の声が上がることも当然想定されます。
したがって、管理栄養士は病棟に常駐して現在提供している給食が対象患者の治癒にいかに貢献できるか、患者が納得するまで説明することが求められるようになるでしょう。
しかし、令和7年9月25日に中医協より発表された「入院・外来医療等の調査・評価分科会における検討結果」(とりまとめ案)によると、「累次の改定において、管理栄養士の病棟での業務が推進されているが、多くの病棟では配置が進んでいない」とされています。
これでは患者に提供している病院給食の必要性について納得いただくことは難しいのではないでしょうか?
ちなみに同検討結果はこの状況を受けて、「管理栄養士の業務として、給食管理業務が一定割合あるが、調理員不足により調理等の業務が増えている場合もあり、そこを解決して、病棟での栄養管理に専念できるようにしなければならない」との意見があったとしています。
最早、管理栄養士の病棟配置が必須であり、調理員不足等により従来のクックサーブでの病院給食の提供が困難な今、調理の負担を軽減し、病棟での患者とのコミュニケーションと栄養管理の時間を確保するためにも、完全調理済み食品の導入が不可欠になってくるのではないでしょうか?

写真はイメージです
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佐々木修/プロフィール
月刊『ヘルスケア・レストラン』の元編集長であり、現在はフリーの栄養編集者として活動しています。
栄養管理に関する情報を発信するトークライブなども行っており、専門的な知識を活かして多方面で活躍中です。


